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第42話:悪意のミント(黒ラベル)*

サブタイトル末尾に*が付く回は性描写を含みます(15才以上向け)。


「こういうの、嫌…」
「んー?」
声を潜める乾に、荒牧の返答は既に気もそぞろだ。ポケットからミントのタブレットの黒いケースを取り出し、二、三粒を口に放り込んだ。

「学校じゃ嫌だってば…」
階段を登る足は更に三階を通り過ぎ、屋上へのドアの前で止まった。
途端に、乾の身体は壁に押し付けられる。荒牧の舌が乾の唇を割って、口の中にミントのタブレットを残した。
乾のシャツを開けるのも手慣れたものだ。スカートの中で腿を擦り合せ、耐え切れずに声を上げる乾を見つめる目は、やはり蔑みの色をたたえている。

荒牧はいつも以上に乱暴に乾の乳房に食らい付き、手はスカートの中で腿を開いた。
「いやっ!」
「静かに」
「ん…」
乾は荒牧の言い付け通り、素直に口をつぐむ。
戸惑う間に、荒牧の熱い手が下着の隙間に潜り込んだ。
「やっ…」
「ははっ、あんた、いっつもこんな濡れてんの?」
荒牧は舌先に溶けかけたタブレットを乗せ、指先に取り出すと乾の中にそのまま潜り込ませた。
「んっ!」
内蔵が徐々に熱く蕩けて、乾は何をされたのかようやく理解した。タブレットはじわじわと溶け出して、痺れが走る。
荒牧は床にひざまずいて、乾の内側に忙しなく指を擦り付けた。
やがて乾は、膝をがくがくと震わせながら達した。脚が間から透明の水滴を漏らす。
「すげえ…」
そう呟くと、荒牧はスカートの中に頭を潜り込ませ、水滴が流れる乾の腿を、自らの指を舐めた。
「やだっ、駄目…、汚いよ…」
我に返って抗う乾を無視して、荒牧は甘い蜜をひたすら貪った。

朦朧としながらその場にへたり込んだ乾の頭を優しく撫で、髪をつかみ上げると、荒牧は冷え切った声で静かに言った。
「舐めて」
言われるがまま乾は荒牧のベルトを外し、着衣を引きずり下ろしてくわえ込む。口に残ったタブレットが転がって、荒牧が震える。
早く教室に戻らないと…、早くいってしまって欲しい…
身体の中に未だ残ってじわじわと溶け出すタブレットの痺れに耐えながら、乾は懸命に舌をひらめかせた。荒牧はこれまでにないような反応を見せる。腰を震わせながら突き上げて乾の喉を犯す。きっとこの状況に興奮しているのだ。
「んあっ…」
荒牧は瞬間、喉笛を鳴らして果てた。乾の後頭部を押さえ付けながら低く呻く。
「ああ…、…全部飲んで」
囁かれるがままに、絞り出された体液を残らず飲み込んで乾は咳き込む。荒牧は呼吸を整えながらひざまずいて、乾を抱き締めた。

怖い。
こんな時も荒牧は語気を強める事もせず、優しさすら漂うような声色で囁くのだ。しかし行為はまるで乾の恋を切り刻むようで、まるで情はない。
空恐ろしさが身に染みていながら、それでも乾は荒牧を拒否する事は出来ない。
怖ず怖ずと荒牧の背中に腕を回す乾に、荒牧は笑い出した。
「…ふっ、はははっ」
どうして笑ったりするのか。乾は混乱して更に荒牧を抱き返した。
「カンちゃん」
「…」
抱きすがる腕を引き離して、荒牧は乾の顔を覗き込んだ。
「あんた、本当イヤらしいな」
「…」
「嫌がる割に、結局は逃げないじゃん」
耳鳴りがしている。
乾は荒牧の嘲笑を上の空で聞いていた。

荒牧は立ち上がって手際良く着衣を整えると、その場にへたり込んだままの乾をしばし見下ろした。
静かに手が伸びる。乾は荒牧の揺れる影に怯えて身を強張らせた。しかし、その手は乾の髪をくしゃくしゃと撫でるだけだった。荒牧は何も言わずに階段を降りて行く。
立ち上がれなくなった乾の腿に床に涙が落ちる。タブレットはとうに溶け切っても、いつまでも体内に居座っているかのようだった。


自習中の特進クラスの教室に乾が戻ったのは、既に個人面談も終盤に差し掛かった頃だった。
トイレでしばらく泣いた後、乾は鏡の前で何度も顔を洗って、必死に取り繕った。それでも泣いた形跡が残っているような気がして、乾は前髪で顔を隠さずにはおれなかった。
「カンちゃん」
乾は声におののく。
教室の中央に位置した後藤の席で談笑の輪に加わっている荒牧が、乾に手招きをしている。
「カンちゃん、遅かったねー。どこ行ってたの?」
乗り気しないまま輪に加わる乾に、後藤が屈託なく笑いかける。
「ウンコでしょ、ウンコ」
「関口、下品」
関口のからかいに宇佐美が突っ込んで、乾はようやく不器用そうに笑った。
仲間と笑いながら、乾は荒牧を盗み見る。荒牧が静かに笑みをたたえて乾を見つめる。その様は、傍目にはクラスメイトの戯れ合いを眺める優しい友人だった。


自習時間が終わって、荒牧が乾に何かを投げ渡した。
「あげる」
受け取って、乾は手の平を広げてみる。ミントのタブレットのケースだ。
「それ、好きなんでしょ?」
乾は小さな黒いケースに見入って赤らむ。
「俺、イマイチだった」
「…」
恐る恐る荒牧を見ると案の定、歪んだ口元で笑い、乾を見下ろしていた。
「スースーして寒いだけ」
「…」
乾が何も言えずにケースを握り締めていると、それを見ていた宇佐美が手の平を差し出す。
「カンちゃん、ちょっとちょーだい」
乾は紅潮が冷めないまま、宇佐美にケースごと渡した。
「…あげる」
「え、良いの?わーい」
何も知らずに宇佐美は無邪気に笑う。その一連の様子に、後藤と関口が密談を始めた。
「…関口、見た?あんな事で真っ赤だよ、カンちゃん」
「純情過ぎる」
「誰だ、“ヤリマン”なんつったのは」
荒牧は、その密談を耳に入れて眼鏡を直しながらうつむく。荒牧の口の端が歪んで肩が揺れているのを、乾はただ見ていた。




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